練習

さよならまでの助走

マザーコンプレックス

 

私は母親が大好きだ。

世界でいちばん好きな人は誰かと聞かれれば、恋人でも友でもなく、母だと答えると思う。

 

小さい頃の夢は「ママと結婚する」だったし、ママが死んだらどうしようと夜寝る前に不安になり枕を濡らしたことが何度もある。

 

私が物心ついた頃には、既に家は母子家庭で、母は毎日のように夜遅くまで働いていた。

記憶のある限りだと、平日は延長保育の時間を過ぎても母が迎えに来れないことが何度もあったし、土日休みはほとんどなかったため、祖父母の元にいた。

小学校に上がると、お留守番ができるようになるまでは学童保育に預けられていた。

 

だからと言って、寂しい思いばかりをしていたわけではなくて、私は母と色んなことをしたし

母の仕事が軌道に乗ってからは(もちろんそれはだいぶ時間がかかり、落ち着いたのは私が中学生の頃なのだが)二人の時間も増えた。

 

なのに、私はいつだって母を求めているのだ。

 

 

ママは2年前、10数年付き合ってた男とあっさり別れた後、半年ほどの交際期間を経た男性と結婚した。いわゆる、デキ婚だった。

 

いつも優先順位の1番上にいたはずの私は、いつの間にかピラミッドから転げ落ちて、今では上から数えて3つ目くらいだ。

もちろん、母にはそんなつもりないのだろうけど。

 

私は男に負けた、と思わざるを得なかった。

私のことを本当に思っていれば妊娠なんてしないでしょ?といつも誰かが私に問いかける。

 

 

ママが結婚してから、私の生活は半年ほど荒みに荒み、退廃的もいいところだった。

学校に行かず、週7日替わりセックスを謳い、文字通りの好き放題していた。

虚しさがただ広がるばかりで、そういう生活は長くは続かなかった。現実を忘れるための刹那的な行為に過ぎなかった。

 

 

私は滅多矢鱈に男に抱かれても、たとえそこに愛があったとしても、私が求めているのはいつだって「母親」からの愛なのだ。

 

 

この呪いを解ける男はいるのだろうか。

 

 

 

 

平成に置いてきたはずの君との関係

 

 

彼の嫌いなところを挙げるとキリがない

 

例えば、待ち合わせには必ず遅刻するところや食べ物の好き嫌いが多いところ、寝るときに歯ぎしりがうるさいところ、あまりにも多すぎて思い出せないほどだ

 

この中でもおそらくいちばん嫌いであろうところが私に別れの切り札を召喚させた

 

 

長くなるけれど、その話をしようと思う

 

まず、彼に惹かれた理由のひとつが正義感の強さだった

どんな場面でも公平な立場から物事を見ることができ、意見をはっきりと言える男性だったと思う

 

しかし、彼と別れようと決めたのもまた、その正義感が理由だった

 

 

まず、あなたがこんな場面に遭遇したとする

(もちろん、これは私が体験したワンシーンでもあるのだけれど)

 

恋人と異性の友人が同じタイミングでウンウン困り果てているとき、あなたはどんなアクションを起こすだろうか

 

私はトラブルの内容を考慮せず救われるのが恋人であることの特権だと信じて疑わなかった

だから、もちろん私が彼の正義を享受できると思っていた

 

 

ところがどっこい、元恋人は正真正銘の正義のヒーローであったので、忖度することなく、手を差し伸べるべき状況にある方を選んだのだ

 

 

詰まるところ、私よりその友人の抱えていた問題の方が憂慮すべきだったので、私は選ばれなかったのだ

 

これは単に正義感の尺度の違いなのだけれど

私がいちばん苦しかったのは、彼の長所として捉えていた「正義感の強さ」が見事に仇となったことだ

好きと嫌いは紙一重とよく言うものだが、本当にそうだった

ちなみに、毎夜アンビバレンス万歳をした

 

 

その後の事の成り行きは端折ってしまうが、私たちの関係は平成と共にお留守番という形になった

 

あくまでもお留守番であるので、新しい元号とともにまた迎えに行くか、と思ったりするものだ

 

 

ただいま

 

現在の時刻は4:24

たったいま帰宅しました。

 

どうしてこんな時間になったのかというと、

お給料のつかないおしごとが長引いたからで

洗濯を回している35分間でこの文章を

推敲しながら認めています。

 

 

わたしは今年の秋にハタチになるのですが、

想像していたハタチとは程遠い人間であることに驚きを隠せずにいます。

 

 

ハタチの誕生日は彼氏がケーキとティファニーのジュエリー、わたしのすきなかすみ草の花束を持った彼が盛大にお祝いしてくれるの!

と夢見ていたのも束の間

もうわたしの誕生日は2ヶ月後に迫っているのです

 

今更恋人をつくるなんて

陳腐なことはしたくありません

 

それでも、

明け方に少し散らかったひとりの部屋に帰ると

誰か人の温もりを求めてしまうのです

 

わたしのハタチの誕生日は誰が祝ってくれるのでしょうか?

 

 

 

どうやら洗濯ができあがったみたいです。

 

それではおやすみなさい